目次

Ⅲ.電極の設計方法

「Ⅰ.放電加工とは」へ

「Ⅱ.加工条件の考え方」へ

2.材質の選択方法

電極の材質の選択方法は、金型の種類により異なります。

  • 中・大形プラスチック/ダイキャスト金型
    OA機器/家電/自動車関係
  • 小形プラスチック/ダイキャスト金型
    携帯電話/デジタルカメラ/OA機器
  • 精密プラスチック金型
    電子部品・エンプラ関係
  • その他

1)「中・大形プラスチック/ダイキャスト金型」の電極材質の選択方法

(1)金型の特徴

この分野の金型は、家電や自動車用プラスチック金型に代表されます。多数の電極を使用する場合があり、ひとつの金型で400本程度になる場合もあります。また電極サイズも小さなものから大きなものまで広範囲であり、なかでも補強部(リブ溝)などのような小さな加工部も多く、大形の金型でありながら電極本数でみると70%程度が小さな電極です。

 

  • 電極本数が多い
  • 電極の大きさが広範囲(70%は小さい電極)
  • 加工精度よりも加工速度を重視

(2)電極材質に求められる要素

重視される要素は電極製作時の加工効率と放電加工時の加工速度です。この点から電極材質としてグラファイトが使用されます。電極としてのグラファイトは、多くの種類が普及していますが、グラファイトの粒度の小さな高品質なものは放電加工時の仕上げ品質が高い反面、フライス加工による電極製作時の加工効率が極めて悪く、中・大形の金型では比較的粒度の大きな中品質のグラファイトが利用されます。またグラファイトは補強部(リブ溝)用の細い電極でも、放電加工時に曲がりにくいという有利な特徴があります。

グラファイトを選択する上での注意点としては、放電加工時に異常な放電が発生しやすく、特に放電加工開始時の放電面積が小さい場合や電極消耗の少ない放電加工条件を使用する場合には危険度が増大します。この面からグラファイトを使用する場合は電極消耗を少し大きくした放電加工条件が適しており、同じ加工部に対して電極本数を多くして対処する必要があります。

 

  • グラファイトは電極製作時の加工効率が高い
  • グラファイトは放電加工時の加工速度が速い

2)「小形プラスチック/ダイキャスト金型」の選択方法

(1)金型の特徴

この分野の金型は、携帯電話やデジタルカメラなどのプラスチック金型に代表されます。キャビティ面の加工では、磨きやすく細かい面あらさの高品質な加工面が要求されます。一方、コア側の加工では、面品質の重要性が小さくなりますが、小さな電極を数多く必要とします。

 

  • キャビティは高品質な加工面
  • コアは、面品質の重要性は小さいが、電極が小さく本数が多い

(2)電極材質に求められる要素

重視される要素は面品質です。この点から電極材質として電気銅が使用されます。放電加工では細かい面あらさの領域では一般に電極消耗が大きくなりますが、グラファイトはこの傾向が極めて大きく、細かい面あらさの加工では粒度の小さい高品質なものを使用します。それでも銅よりも電極本数を多く必要とします。一方、コア側の加工では、電極本数が多いため、電極製作時の加工効率が高いグラファイトが適しています。

 

  • 銅は高品質な加工に適す
  • グラファイトは電極製作時の加工効率が高い

3)「精密プラスチック金型」の選択方法

(1)金型の特徴

この分野の金型は、電子部品・エンプラ用プラスチック金型に代表されます。精密な寸法精度が求められます。

 

  • 寸法精度を重視

(2)電極材質に求められる要素

重視される要素は加工精度です。電極製作時および放電加工時で高い加工精度が求められます。一般的には銅が使用されます。また、電極製作時の切削性の利点で銅タングステンやグラファイト、放電加工時の熱膨張の少ない利点で銅タングステンやグラファイト、放電加工時の熱で電極が曲がりにくい利点でグラファイトなど、それぞれ特徴を生かして銅以外が利用されることがあります。

 

  • 銅は総合的な適正がある
  • 銅タングステンやグラファイトは電極製作時の切削性の利点がある
  • 銅タングステンやグラファイトは放電加工時の熱膨張の少ない利点がある
  • グラファイトは放電加工時の熱で電極が曲がりにくい利点がある